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大阪高等裁判所 昭和31年(ネ)862号 判決

控訴人 小淵太郎

被控訴人 加茂文彦 外一名

主文

原判決を取り消す。神戸地方裁判所尼崎支部が同庁昭和三一年(ヨ)第三四号仮処分申請事件について同年三月一〇日にした仮処分決定を取り消す。

被控訴人等の右仮処分申請を却下する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。

事実

控訴代理人は主文と同じ判決を求め、被控訴人等代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」という判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において、「控訴人は、本件仮処分決定自体が被保全請求権の不存在等の理由で違法であり、かかる違法仮処分決定の形式的存続が法律安定上有害であり、同仮処分決定の取消に単なる感情上ではなく法律上の利益を有するから、本件異議申立をなしたものである。」と述べたほか、原判決の事実摘示と同じであるから、それをここに引用する。

理由

被控訴人等が神戸地方裁判所尼崎支部に控訴人の昭和三一年二月二六日付招集にかかる同年三月一二日西宮労働会館において原判決末尾添付目録記載の会議事項につき開催する西宮タクシー株式会社の株主総会は本案判決確定にいたるまで停止する旨の仮処分申請(同庁昭和三一年(ヨ)第三四号)をし、同庁が同年三月一〇日右申請どおりの仮処分決定をしたことは当事者間に争がなく、控訴人が同月十九日に右仮処分異議の申立をしたことは記録上明らかである。

被控訴人等は、「控訴人は、本件株主総会停止を命ずる仮処分決定の送達を受けながらその受領を拒み、株主総会を開催実施して終了したものであつて、既に株主総会の終了した現在本件異議申立をする利益を有しない。」と主張するから、控訴人の本件異議申立が不適法であるかどうかを考えてみるに、元来仮処分の異議については、申立の期間についての定めがなく何時でも異議の申立ができるものと解するのみならず、本件について仮処分決定によつて停止しようとする株主総会が開催実施せられて終了したとしても、形式上仮処分決定が存在する以上は、やはり控訴人において右決定の除去を求める利益を有するものと解するから、本件異議の申立が右株主総会終了後になされたからといつて、右申立を不適法のものということができない。従つて被控訴人等の右主張は理由がない。

次に、本件仮処分申請の当否について考えてみると。本件仮処分申請は、控訴人の昭和三一年二月二六日付招集にかかる同年三月一二日開催の西宮タクシー株式会社の株主総会を停止するにあることは被控訴人等の主張自体によつて明らかであるところ、既に右開催期日を経過した現在においては右のような仮処分を求める利益がないことは勿論であつて、従つて本件仮処分申請は、その他の争点についての検討をまつまでもなく既にこの点において理由がないものと認めるから、本件仮処分決定を取り消し、被控訴人等の本件仮処分申請を却下することとする。

よつて、民訴法三八六条、九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決をする。

(裁判官 松村寿伝夫 竹中義郎 入江菊之助)

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